雑記、17

 16が飛んだ。普通に16を上書きしてもいいのだけれど、既に3つもあるボツの16をどうこうする気にはならなかったし、これも16にするとまたボツの藻屑と消えてしまいそうな気がした。だから、これは所謂ゲン担ぎだ。今日こそは出すぞ、と決意を込めて。


 目を洗うのが怖い。

 昔から水の中で目を開けられない質で、プールに入った後も水道水を掬って目を擦る程度にしか洗ったことがない。それは大きくなった今も変わらなくて、シャワーを浴びるときにも顔に水がかかる状況では強く目を瞑ってしまうし、意識したとしても治せるような物ではない。十数年の間染み付いてきた恐怖心が、目を開く事を拒絶する。


 取り返しのつかない事を恐れている。

 と、書くと当たり前の事のように思える。誰だってそうで、取り返しのつかない事を恐れないような人間は大半が未来を迎える前に死にゆくものだろう。

 ただ、僕は自分でもそれが過剰すぎるきらいがあると自覚している。高所恐怖症に閉所恐怖症(これは最近和らいでいる)、水も虫も動物も、基本的に何もかもが苦手だ。

 単純にビビリであるというのは正しい指摘だと思う。明かりの付いていない廊下を歩いて手洗いに行くのも嫌だし、ジェットコースターにもほとんど乗れない。高3の遠足のUSJでビビリっぷりを遺憾無く発揮して、和を乱した記憶もある。


 我々、所謂『オタク』という生物は、死という概念を軽薄に扱いがちだと感じる。

 推しが作品内で死んだ、なんていうのは今日日珍しくもない話だし、推しが殺す側に回ることもある。そうでなくとも二次創作では死だのグロだのが跋扈する世界である。

 自分自身が、死を軽薄に考えているな、という気づきを最近得た。

 知っての通り、僕は推しを殺すのが好きだし、推しに殺させるのも好きだ。最上は二次元のキャラクターにしては珍しく、連続した世界を有しているキャラクターで、それ故に時間や死といった概念と非常にマッチする。天空橋は狂信に応える事を選んだし、北上はそもそも実在性に難がある。どちらも死を結びつけやすいキャラクターだと感じる。


 では、彼女らが死ぬストーリーばかりが欲しいか、と問われると、当然のことながら答えはNOである。別に僕は彼女らの魅力を死にしか見出していないわけではない。


 忘れてはならないのは、死はスパイスであるということだ。それもとびきり苛烈な、一粒で何もかもを塗り潰してしまうほどの。


 自らの性癖の都合上、普段目に入るものの中にも闇性癖と分類されがちなものが多いと思う。

 僕の世界は僕の見たもので出来ている。少なくとも観測範囲は見えるものだけだ。だから、僕は見えるものだけを見て、世界には闇の性癖ばかりが溢れていると勘違いしてしまう。それは言わば個人の思想の最先端、溢れ出る欲望の中の一つでしかないというのに。

 そうやって、基準は徐々に狂っていく。アクセントとして使われるべきであるはずの死や不幸はいつの間にか彼女らの日常に侵食し、希少性と新鮮味を失っていく。


 一周廻って、ただの死ではストーリー性をあまり深く感じられなくなってしまった。本来は雑に消費されるべきではない筈の死が、今や僕の中では通常の出来事の一片として処理されてしまう。

 まあこれは死に限った事ではなく、人は一度見たものには耐性がついてしまうというものなのだろう。死後、異世界に転生するタイプの作品も最初は画期的だったのだろうし、タイムリープものも初めて触れた時にはよく練られたシナリオに舌を巻いた。だが、それらも今となっては特別目新しいものではない。差別化要素こそあれど、全く新しい概念として誕生しているわけではないから。


 また日を跨いだ。これが何を意味するかというと、着地点を喪失したということである。やはりプロットは大事なのだな、とまた一つ学びを得た。


 全く別の話を最後に少しだけ。

 他人に気を遣えない人間が嫌いだ。

 例外として、二度と関わる気がないような相手の場合は別とするが、それ以外の人間に対して最低限の礼儀を払えない人間を嫌っている。

 この場合の礼儀が何に当たるか、と問われれば明文化するのは難しいので、日本人らしい『暗黙の了解』というやつになるのかもしれない。

 あまり自分で言うものでもないとは思うが、人への対応にかなり気を遣っているつもりである。僕自身の特性として、悪と断じた物には殴りかかるというものがあるため、万人に対してそう、とは言えないが、少なくとも友人と認識している人間には配慮をしているつもりだ。

 まあ、だからお前もそうしろ、とかそういうわけではないが、それでもやはり相手がこちらを慮っていない発言をしていると、少し悲しくなる。それが決め手で交友関係を絶った相手もいる。


 そういうことです。最近は悪夢を見ない。(まともな睡眠をとっていないのもある。)